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【施設看護師】認知症の方のよくある施設内トラブルと接し方
介護老人保健施設で働いて4年目になる看護師です。
認知症の方への対応に困っている医療・介護関係者の方や一緒に生活されているご家族様へ、認知症の方への接し方を紹介します。
この記事をよんであなたの関わり方で、認知症の方が穏やかに過ごせることが、自分自身も穏やかな気持ちになるのを体験してください。
認知症とは
認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。認知症にはいくつかの種類があります。
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。症状はもの忘れで発症することが多く、ゆっくりと進行します。次いで多いのが脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による血管性認知症です。
障害された脳の部位によって症状が異なるため、一部の認知機能は保たれている「まだら認知症」が特徴です。症状はゆっくり進行することもあれば、階段状に急速に進む場合もあります。また、血管性認知症にアルツハイマー型認知症が合併している患者さんも多くみられます。その他に、現実には見えないものが見える幻視や、手足が震えたり歩幅が小刻みになって転びやすくなる症状(パーキンソン症状)があらわれるレビー小体型認知症、スムーズに言葉が出てこない・言い間違いが多い、感情の抑制がきかなくなる、社会のルールを守れなくなるといった症状があらわれる前頭側頭型認知症といったものがあります。
厚生労働省HP|みんなのメンタルヘルスより引用
認知症は、加齢による物忘れとは、異なります。
記憶障害(物忘れ)に加え、理解力・判断力も低下するため、危険認識も低下します。
認知症の種類により特徴はありますが、接し方や対応は共通です。
高齢者施設でよくあるトラブル
転倒事故
認知症の方は、危険認識が極めて低いです。
自分の行動目的も十分に認識できず、その時思いついた行動をとります。
ベットからの転倒・転落だけではなく、車いすからのずり落ちなどもよくある転倒事故の一つです。
病院とは違い、施設では身体拘束は認められていません。人権侵害に当たるからです。
なので、臥床時はベットを低床にしておく、頻繁に見回りする、車いすで過ごされている時はその姿勢や動作、所在確認の徹底などで対応します。
徘徊・離設(無断外出)
落ち着きがなく不安や焦りの表情をして施設フロアを疲れても歩き回ったり、その結果転倒されたりされます。
ご本人に聞くと「出口を探している」「早く帰ってご飯の支度をしないといけない」「売店・スーパーを探している」など必ず目的があります。
無理に止めようとしても興奮されることが多いので、しばらく少し離れた所から様子を見守ります。
疲れてきたころを見計らって、「たくさん歩いて疲れたでしょう。ゆっくりしてくださいね」とお茶を提供し、座っていただきます。
徘徊していた理由を聞いて「その件は息子さんも知っているから、大丈夫ですよ」などと声をかけて不安を解消します。
帰宅願望
認知症の方は、帰宅願望を訴えられる方が非常に多いです。
入所された初めのころは、なぜ施設にいるかわからないからであり、入所してしばらくすると、家のことが心配になる、家族に会いたいと言われます。
ご家族に電話をすることで、落ち着かれることも多いですが、ご家族の声を聞くことで更に帰宅願望が強くなる場合もあります。
中には、「私は閉じ込められています。警察に連絡してください」と書いたメモを何枚も窓の外から飛ばしていた入所者さんもいました。
家に帰ってからご飯を食べるから要らない、家に帰るまではご飯を食べない!と食事をボイコットする入所者さんもいらっしゃいました。
車いすに座っていても突然この帰宅願望が出て、立ち上がり転倒につながるケースもあります。
徘徊と同様に、今の状況が理解できず、ご本人としては本当に必死なのが、表情からもうかがえます。
もの盗られ妄想
施設には、売店はないので現金を使う機会もありません。
盗難被害を防ぐ意味からもお財布は持参いただかないようにしています。
しかし、認知症の方はそれが認識できないので「私の財布がなくなった」「あの人が私の財布を盗った」と入所者間でトラブルになります。
また、施設ではレンタルの衣服を用意しているのですが、カーディガン・ダウンなどの上着は持ち込み可能です。
夏でも、ダウンなどの上着を着ようとされるのでご本人に説明の上、いったんご家族にお返しするのですが、そのことを忘れるため「私の服がなくなった」と興奮されます。
暴言・暴力
介護介入することに抵抗される場合もあります。
ご本人にすれば、何をされるかわからないという恐怖心からだと思います。
もしくは、施設に来る前に暴力を受けていたのかもしれません。
介入するときは、二人以上で対応するようにしています。
異食
テーブルの上にあるティッシュペーパーを食べたり、今まで義歯の自己管理が出来ていた入所者さんが義歯洗浄剤を食べて、口の中が泡だらけになっているなどの異食行為もあります。
異食行為は、窒息などの危険性も高いので、療養環境にも目を配り注意が必要です。
脱衣行為・おむつ外し・便いじりなどの不潔行為
オムツを使って排泄をされている方で、認知症が進行してくるとおむつを外したり、排便が不快に思い便を弄るなどの不潔行為も見られます。
いずれも不快感を伝えることができないために、そのような不潔行為をしてしまうので、排便コントロールも重要になってきます。
認知症の方への接し方
ご本人の話をよく聞く
ますは、傾聴が一番です。しっかりと、話を聞く時間を作って話を聞きます。
ご本人には必ずそうする理由があります。
日常業務は忙しいけれど、命に差し障る仕事でなければ、認知症の方の不穏に対応する方が大切です。
なぜなら、不穏はほかの入所者さんにも広がるんです。
一人の入所者さんの不穏が、他の認知症の方の不穏を誘います。
話を聞く態度、姿勢も重要です。
ご本人の目線より下の位置に、自分の顔を持ってきます。決して、見下すようにしないようにします。
ご本人が車いすに座っているなら、私は中腰かしゃがみこんで話を聞きます。
拒否されなければ、背中をさすったり、手をさすったり、スキンシップを図ります。
話す口調はゆっくりと少し低めの声と笑顔を見せる
認知症の方に限らず、高齢者は高音が聞き取りにくいです。難聴があればなおさらです。
こちらも感情的になると、大声で甲高い声になり、しかも早口になりやすいので注意が必要です。
今は、マスクをしているので、口元は見えにくいですが、眼元だけでも笑顔は伝わります。
ご本人がとりたかった行動を理解しようとする
客観的に見れば、認知症の方のとっている行動は理解しがたい部分もあると思います。
しかし、ご本人は至って真剣です。必死にその目的に向かって行動されているのです。
なぜ、その行動をとろうと思ったのか、話を聞くとともに、自分の想像力も働かせてください。
ご本人のプライドを傷つけない言動
異食などの間違った行動をしていても、危険行動をしようとしていても、大声で叫びながら、近づくことはしないようにしています。
認知症があっても、自分は正しいと思って行動されていることを、否定されれば反抗したくなるのもです。
子供を叱るように叱責したり、話の途中でお説教を始めたりしないようにしましょう。
お薬を使うこともある
どうしても不穏行動がおさまらず、転倒の危険性が高いなどの判断をした時には、短時間効果のある薬(当施設ではリスペリドン内用液)を使うこともあります。
寝る前に眠前薬を内服しても、夜中急に叫びだして、自分で自分を叩いたり、同室者の睡眠を妨げる場合などに使用しています。
とはいえ、施設看護師が忙しいことも十分わかります。
それでも、認知症の方にはゆっくり関わることで落ち着いていただけるので、結果的に他の業務もはかどりやすくなると実感しています。
まとめ|認知症の方は環境の変化に敏感
認知症の方は、非常にデリケートです。
環境の変化に弱い方が多く、自身の認知機能の低下は理解していません。
なので、一般の高齢者以上に、接する態度に配慮することが必要です。
私も若いころは、認知症の方にどう接すればよいかわからず、イライラすることも多くありました。
今は、認知症の方に接することにも慣れてきましたが、自分にゆとりがないと上手く接することができないとも思っています。
あなたの関わり方で、認知症の方が穏やかに過ごせることが、自分自身も穏やかな気持ちになるのを体験してください。
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